任侠ヘルパー

リアリティとエンターテイメントを融合させて魅力的に表現するというのは、本当に難しいのだと思った。二時間という時間はあまりにも短いのだということも。
まず、わたくし今ぼろ泣きで書いております。まずはまっさらな状態で、とにかく初日立て続けに2回見てきた感想を書き残しておきたいと思い、出てきました。なので支離滅裂になると思いますが、書こう。

最初に思った点から書きます!
これは連ドラで見たかった、と思う部分もあり。映画として成立はしているけど、どうしても連ドラと違って時間が圧倒的に短いわけで、その時間内では無理があったんだろうなと思う点もあったし、もう少し掘り下げてほしい部分もいくつかあった。
たとえば、うみねこの家。あそこを「帰ってくる場所」と思うまでの過程が足りなすぎた。不衛生な施設で両手両足縛られて寝ていただけの老人が、感情をとりもどし、生きてきた過去のことを少しでも思い出し、身体を動かすようになり、施設を立て直すことを理解し、新しいうみねこの家をつくりあげ、暮らし、笑い、泣き、うみねこの家を愛し、火事になってなくなってしまったとしてもあそこに戻りたいんだ、というそこまでの感情の推移が、どうしても急すぎた。似たような場面展開が連ドラでもあったけど、あれは一話一話積み上げてきてタイヨウという施設はこうでああでこんなふうで彦一さんはぶっきらぼうだけど優しい兄ちゃんで、だからタイヨウが好きなんだよ、という土台がしっかりあったから説得力もあったんだと思う。
彦一と成次のことも。成次のバックグラウンドのことも絡めて絆を深めたという印象をつけることもできたかもしれないし、もっといろんなことができたと思うけれど、映画のなかではそれが難しかったのだと思う。
茜のきょうだいたちのことも、そう。茜の感情の変化も、そう。
少しずつ勿体ない、もっともっと見れる、もっともっとこのテーマで描ける、そう思わせるくらいに力のある、魅力のある人たちであったということでもあると思うのだけど。もっと見たかった、丁寧に描き込まれた人間関係と人間の感情の変化を。

あとはもうぶっ壊れた感想を。
昨日までの私はデリコの主題歌を、とても大好きだしいい歌だけど任侠ヘルパーにあうのかしら?と、ほんのり少し思っていました。むしろナギナとナトリのダンスナンバーにくわわっていておかしくない、あの曲。
あの曲が、最後にふっと流れだしエンドロールにかわっていく、あの時間。あのときに、分かった感じがしました。ああ、任侠ヘルパーの歌だったって。安住の地をもたない彦一の、最後の後ろ姿を目を閉じて思いながら、おかしくなるんじゃないかしらと思うくらいに泣きました。またあの人は流れていくんだろう、どこかに。いつかのときに涼太をおいて流れていったように、またどこかに。彦一のことだから、成次には何も告げず出てきたんだろう。一緒にいくと言い出すに決まっているし、茜のことも頭によぎっただろうし、あの人は阿呆だから、優しさのつもりでそうやって無言で出てきたんだろうな。最後にひとり立ち向かっていった彦一のことも。成次がどれだけ後悔するだろう、どれだけ悲しむかな、悲しんで悔しんで、アニキの馬鹿野郎くそやろうと罵倒して罵倒して、そのさきに、アニキ馬鹿だからしゃあねえなって諦めたように笑うのかな。いつか、警察と一悶着起こしてどうやらムショに入ったと風の噂できくこともあるかもしれないね。

結局のところ、彦一っていうひとは、人の情によわくって、馬鹿で乱暴だけど弱い人を放ってなんておけない。自分ひとり大きい組織に立ち向かっていったからって、どうなるわけでもないのも分かっているだろうに、ほんの少し幸せが先延ばしできるならと簡単に自分の命を捨ててしまう覚悟をする、そんな馬鹿なひとだった。携帯を投げ捨て、成次の買ってくる銘柄の煙草を投げ捨て、身体一つで歩いて行く彦一の背中に、いかないでください馬鹿なことはよしてくださいとすがりたくなった。
優しくて、馬鹿で、調子にのって失敗もする、結局情に弱くて、女に弱くて、単純で、、、
なんて人間臭い人間なんだろうな。だからこんなにも愛しいんだろうね。

ついこのあいだ、リアリティを追求するあまりエンタメをどこかに蹴っ飛ばしてきただろ、というような映画をみて。こんなんドキュメンタリーじゃないかっていうね。リアルとエンタメって、まさに介護と極道っていう、この映画のテーマみたいなもんだなあと思っていて。どちらも両立させるのは本当に難しい。難しいけれど、この映画でのリアルは、ちゃんと伝わってきたし、エンタメという点では喜怒哀楽すべての感情を刺激され、きっとこれをUPしてからもキッチンにたって夕飯をつくっていても風呂に入っていてもベッドに入って眠りにつく直前までも、ずっと今日の映画のことを考えるだろうと思う。そのくらい強烈に感情を叩かれてきた。だから、あとは限られた時間でどこまで掘り下げられるのかなあという点を思うわけだけれど、でも、それを思ってもなお、この翼彦一というひとには、またどこかで会いたいと思う。また泥くさいことやってるなあと思わせてほしいと思う。
りこちゃんにも、借りをかえさないといけないもんね。そんな映画も見てみたいわ。隼會の危機を救いにあらわれる、翼彦一。うーん、格好いい。